My Bloody Valentine

 
 

今日も今日とて寒い。

朝起きて布団の中から察した。雪が降っていると。
 
布団の中で妄想した。
大雪で仕事が休みになって、温泉に行くことになる。適当に選んだ温泉は寂れているけれども列記とした温泉で、温泉街としても古くからの歴史がある。大雪のため他に客も少なく、ほぼ貸切状態で湯に浸る。そのあと浴衣を着て、温泉卓球。卓球のラケットが足りなくて、緑のスリッパで卓球をする。汗をかいて再び温泉に飛び込む。
 
人から湯治に行ったという話を聞いて以来、どこか悪いわけでもないのに、ずっと湯治に憧れている。一週間ほど温泉街で生活したい。いつでもどこでも気軽に熱い湯に浸れるという、冬の贅沢を満喫したい。おいしい料理とか別にいいから(まずい料理も嫌だが)、湯のためだけに、他に何も持たず、温泉街におもむきたい。
 
 
そういえば今日はバレンタインデーである。ここ数年は自分の中でバレンタインというのは、「世界各国のすごいパティシエの祭典が各百貨店で開かれるイベント」となっていた。実際のところ、会場はどこも物凄い人だかりで真面目に買い物をすることは困難だが、世界のショコラが一同に介するので、私にとっては夢の世界だったりする。ディスプレイ商品を見たり、少し試食したりするだけで満足してしまうくらいだ。何も買わずに会場を去る私には、夢の世界に触れた高揚感と、何も買わなかった寂寥感と、人混みに揉まれた疲労感とがないまぜになって残る。
学生の頃は、その時期だけ短期のアルバイトとして会場で働いていた。そのためチョコレートのブランドについては少しだけ詳しくなった。数年経って、徐々に出店ブランドも変わり、トレンドも毎年変わるので、結局毎年各百貨店に足を伸ばしている。
高級チョコレートは、なかなか沢山は楽しめない。今年も自分チョコはなしだ。本当にチョコレートが好きな人でお金のある人は、どうしてそんなに買うのか、というくらいごっそり買う。かと思えば、試食のために毎日3時ごろに現れる赤いジャンバーのおじさんとかもいる。自分の意のままに物を買えない私は、どちらかというとおじさん寄りなのか。
 
ずっとそんな風にチョコレートを純粋に楽しんで来たため、本当のバレンタインデーの楽しみ方を知らない。今年のバレンタインは華金か!と騒いでいた人がいたけど、当日をどう楽しめばいいのか。遠方に住むあの人には、なかなか会えないため、この前会った時にもう渡してしまった。男の人のために甘い物を選ぶということをしてこなかったので、甘いものをあまり食べない人には何を選べばいいかとても悩んだ。結局、苦手でもなんでも、バレンタインならチョコだろう、という強引な言い訳で押し切ってしまった。
 
とりあえず今日は電話でもかけてみようか。